これから「野鳥の撮影を始めたい」と思っている初心者の方、もしくは「もっと綺麗に写したい」と考えている方も多いと思いますが、機材選びを間違えると無駄に時間を要するだけでなく、無駄な出費にも繋がりますので、効率よくステップアップして行くための野鳥撮影機材の選び方を紹介します。
画質よりもとりあえず大きく写したいと考えている方は、高倍率ズームのコンパクトカメラやネオ一眼と呼ばれるレンズ一体型のデジタルカメラから初めて、画質の判断基準とするのも良いと思います。
また、初心者が最初に考えるのは、「もっと大きく撮影したい!」と倍率の高いカメラの購入を考えていることと思います。しかし、そのうち大きく写るだけでは満足できなくなり画質を求めだし買い変えを繰り返すうちに「初めから良いものを購入しておけば良かった」と後悔することが多々ありますのでお気をつけください。
と言いながら、これは、まさに私の事で「高倍率ズームコンデジ」→「一眼レフ+望遠ズーム」→「フィールドスコープを使ったデジスコ」→「望遠鏡を使ったデジスコ及び直焦点撮影」など紆余曲折の末、最終的に単焦点の大口径望遠レンズ+一眼レフ(ミラーレス)となりました。
誰しも多かれ少なかれ機材の変更を繰り返しながら、それぞれの好み機材を見つけているとはいえ機材の変更=出費が嵩む原因となります。よって、いかに早く「自分好みの機材をみつけるか」が大切になってきます。
撮影機材が決まるまで
では、なぜ好みの機材が見つかるまで時間がかかってしまうのでしょうか?
この点について順番に解説していきます。
撮影方法
野鳥を撮影する方法として、大きく分けて高倍率ズームデジカメ、一眼レフ(ミラーレス)、デジスコなどがありますが、どの方法が自分の撮影スタイルと求める画質なのか?がわからない事が大きいでしょう。したがって撮影の対象が、「飛翔撮影などの動体か?」それとも「止まっている野鳥の姿をしっかり撮りたいのか?」などを決めることにより「手持ち撮影」が良いのか「三脚を使用する」のかが大まかに絞れると思います。また手持ち撮影をメインにするならカメラは高感度耐性がありボディ内手振れ補正の装備されたモデルもしくは、手振れ補正のあるレンズを選ぶ方が良くなりますし、三脚使用なら手振れ補正は気にしなくても良くなります。この様に自分の思い描く撮影スタイルと求める画質を基準に機材を選んでいくことになります。
高価
野鳥撮影に出かけると、珍しい野鳥が出ている所では、大砲のようなレンズがずらっと並んでいます。そして、その良さと価格を教えていただけますが、自動車が購入できる価格です。普通の金銭感覚なら「そんなの買えない」と思うはずです。でも「綺麗に野鳥を撮りたい」となり、自分の中の常識範囲で、何とかならないかと試行錯誤を始めることになります。結果、冒頭でもお話した「初めから良いものを購入しておけば良かった」となりかねないのです。
例えば「Canon 単焦点超望遠レンズ EF600mm F4L IS III USM 」だと、小型車や軽自動車が購入できるような価格ですし、レンズだけではなくカメラボディも必要です。ましてこのクラスのレンズに合わせるカメラは、「EOS-1D X Mark III ボディー 」というプロモデルを皆さんお使いです。それ以外にも重量級のカメラとレンズを支えるしっかりとした三脚、野鳥の動きをスムーズに追う事の出来るプロ用ビデオ雲台などが必要になります。
Canon 単焦点超望遠レンズ EF600mm F4L IS II USM フルサイズ対応
Canon デジタル一眼レフカメラ EOS-1D X Mark III ボディー EOS-1DXMK3
重い
上記で説明した単焦点600mmは、以前のモデルよりも軽量になったとはいえレンズ単体で約3キロあります。これにカメラや雲台+三脚の重量が加わります。
これが手持ちでよく使われるズームレンズだったとしても、それなりの大きさと重量になります。例えば「Nikon AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR」では、約2.3キロ、このレンズとの組み合わせで多いカメラは「Nikon D500 」ですが、重量は約860グラム。レンズと合わせると3キロ越えてますので、この機材を持って一日歩き回る体力が必要になります。
Nikon 望遠ズームレンズ AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR
解像感
ネットなどでで様々な画像が見れるので、尚更ですが「もっと綺麗に撮りたい」「もっと解像感がほしい」思うでしょう。しかし気を付けてほしいのはネット上の画像はリサイズされていたりレタッチされているものも多いということ。本来の描写よりも良く見えるようなっている事。またパソコンのモニターの良し悪しによっても見え方は変化します。
撮影時ではレンズの性能が同じなら、被写体との距離が近いほど解像感は高まり、遠くなるほど解像感は低下します。これは空気層の厚さが関係しているので、なるべく近づいて撮影する方が良いことになります。はじめは「大きく撮りたい」と思い焦点距離を伸ばそうとしますが画質を求めだすと今度は被写体との距離を詰めるようになります。これを理解していないとひたすら焦点距離を求めたりレンズの性能を向上させようと買い替えを繰り返しドツボに嵌ります。
機材選び
ここからは、機材を選ぶ上で、考慮すべき点を紹介していきます。
撮影画像の鑑賞サイズ
撮影した画像を鑑賞する環境により、求めるカメラやレンズ性能も変わってきます。
例えば「ブログサイズ(横幅1200px)」、「モニターの等倍表示」、「写真コンテスト用」等により求める画質も変わることになりますので、目的に応じた機材を使用することになります。
センサーサイズ
画質は、センサーサーズが大きくなるほど良好になります。大きいほうから順番にフルサイズ > APS-C > フォーサーズ > 1インチ > 1/2.3型が代表的なセンサーサイズになります。
野鳥撮影においては、センサーサイズが小さいほど35mm換算の焦点距離が伸びるというメリットがありますが、背景のボケなどの画質やノイズ耐性はフルサイズに比べ落ちることになるので、画質と焦点距離を天秤にかけることになります。
焦点距離
野鳥撮影で使われている焦点距離は、「600mm」と「500mm」をメインに状況により1.4x、2.0xのテレコンバーターを使用するのが一般的です。またフルサイズセンサーを搭載したカメラではレンズの焦点距離そのままですが、「APS-C」センサーを搭載しているカメラでは焦点距離が35mm(フルサイズ)換算で約1.5倍になり、「フォーサーズセンサー」を搭載しているカメラでは約2倍となります。
そのためマイクロフォーサーズ規格の300mmF4使用すると、600mmF4となりますので、コンパクトなレンズで焦点距離を稼ぐことができるのです。
レンズ性能
高級レンズとされるものには、「蛍石」や「ED」メーカーによっては「UD」や「SD」と呼ばれる異常分散ガラスという光の滲みを抑えるレンズが使われています。一番わかりやすいのは被写体の淵が紫色に縁どられるような現象をパープルフリンジとよびますが、これは紫色に縁どられるだけではなく解像度にも影響します。
下の画像は昔ののMF レンズで撮影したものですが、全体に紫がかかっており、枝の淵には紫色がの色収差が確認できます。
キャノンの「白レンズ」または「Lレンズ」呼ばれるものには、「蛍石」や蛍石に匹敵するとされる「スーパーUD」と呼ばれるレンズが使用されていますし、ニコンやSONYでは、「スーパーED」「ED」「FL(フローライト)」と呼ばれているレンズを用い色収差を抑止しています。
手持ち撮影で人気のある300mmF4を紹介しておきます。
キャノンのレンズと共に人気のあるニコンの300mmF4は、PFレンズ(フレネルレンズ)を用いコンパクトなボディを実現しています。
これらのレンズを使う方は、35mm換算の焦点距離が伸びる効果を持つAPS-Cセンサーを搭載した機種と組み合わせて使用する方が多いです。それ以上に焦点距離を稼ぎたいときはテレコンバーターを使併用します。
F値
F値は、小さくなるほど明るいレンズと言われシャッタースピードを上げることができるので、条件の悪い時や動きの速い被写体の撮影に有利です。シャッタースピードが遅いとブレの原因となりますが、最近では優秀な手振れ補正とISO感度の向上が目覚ましく、以前ほどF値を気にしなくても良くなったためか、キャノンでは、ミラーレス用レンズとして「RF600mm F11 IS STM」や「RF800mm F11 IS STM」というF値が大きい単焦点レンズが販売されています。
単焦点orズームレンズ
ズームレンズでも優秀なレンズはたくさんありますが、レンズ構成が複雑でレンズの使用枚数も増えることから、解像感や抜けの良さでは単焦点レンズが勝ります。
またズームレンズの方が便利に感じますが、野鳥撮影に限るとテレ端(望遠側)しか使わなくなりがちです。それなら初めから単焦点レンズを使用する方が解像感が高く満足を得やすいことになりますので、購入前にしっかり検討しましょう。
ズームレンズで人気のあるニコンのNikon AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VRとフランネルレンズを採用しコンパクトで軽量なことから生産が追い付かずバックオーダーを抱えるほど人気のAF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VRを紹介しておきます。
一眼レフ・ミラーレス
最近で各社からミラーレス一眼が登場していますが、野鳥撮影ではまだまだ一眼レフが根強い人気です。一眼レフは実際の被写体を目で確認しながら撮影するので見ていて気持ちが良く、連射中も被写体を確認することができますが、ミラーレスの場合はファインダー内のモニターに映る被写体を見ることになりますので連射中はブラックアウトしてしまう機種もあります。
反面、ミラーレス一眼のメリットとしてはミラーの上下動による「ミラーショック」がない、ファインダー内で、露出補正後の画像を確認しながら撮影できるなどがあります。
各社ミラーレスカメラに合わせて専用レンズを発売していますが、一眼レフ用のレンズに比べると、まだまだ本数が少ないので、それを補うために一眼レフ用レンズが使えるように、レンズアダプターを用意しているメーカーもあります。
有効画素数
SONY α7RⅣは有効画素数6100万画素という驚きの画素数です。これだけあると小さく撮ったとしても、トリミングにより大きく引き伸ばす事が出来るので、焦点距離が短めのレンズでも大丈夫かもしれませんね。ただ画素数が多いと少しのブレも写り込むことになるので細心の注意が必要です。
AF性能・連射枚数
これらはカメラの性能に依存するものですが、これから始める方は入門用の一眼レフやミラーレスで十分だと思います。なぜならデジタルカメラはモデルチェンジごとに機能性がアップしていくので買い替えは必然と言えます。また連射速度は飛びものや動きの速い野鳥の一瞬を切り取るのには有利ですが、枝に止まっている野鳥をじっくり撮るなら、それほど重要ではありません。撮りたい被写体をしっかりと決め必要であればステップアップすれば良いと思います。
最後に
これから野鳥撮影を本格的に行おうと思っている初心者の方に向けて、紆余曲折せず早く結果に結びつく判断ポイントを紹介してきましたが結論としては、早い段階で求める画質を決め高額であったとしても思い切った決断をすることで「安物買いの銭失い」を回避する事です。
これから始めようという初心者は、「300mmF4(サンヨン)の単焦点レンズとテレコンバーター」と一眼レフもしくは、ファインダー付きのミラーレス、例えば、AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VRとAF-S TELECONVERTER TC-14E III とニコンD500 ボディもしくは、
このレンズなら、のちのち「600mmF4(ロクヨン)」を購入したとしても手持ちや広い範囲を撮りたい時は「サンヨン」、三脚で構えて撮るときは「ロクヨン」と使い分ける事が出来ますので、買い替えではなく追加購入という形になり無駄がありません。 また売却するにしてもレンズは価値が落ちにくく資産価値としても優秀ですが、デジカメになってからのカメラボディは年数に応じて資産価値がキッチリ低下していきます。また同じイメージセンサー同じ画像処理エンジンを使っていたとすると、プロ用とされるものも入門用とされるものも撮れる写真は同じです。違いは操作性、堅朗性、防水性、AF精度や速さ、連写速度などの機能性の違いです。 よって優先順位としてはレンズへの投資を優先的に行うことが、資産性を確保しつつ描写性向上できる近道と言えます。
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