電子接点付きのマウントアダプターが登場したことで、AFが使えるにもかかわらずマウント縛りから解放され選択の幅がったことにより、レンズ選びの幅も広がり悩んでいる方も多いのではないでしょうか?そんな方に向けて野鳥撮影にも使えそうなズームレンズを検証してみます。
カメラマウント
もともとニコン党だったのでレンズ資産があるので、野鳥撮影は主にNIKON1 J5とZ50を使用していますが、もう一つの趣味であるバイクツーリングでは、FUJIFILM X-T30がメインとなっています。
富士フィルムのカメラを使いだしてから、その発色の良さに惚れ野鳥でも、フィルムシュミら―ションの発色を楽しみたくなり「富士→キャノン」の電子接点付きマウントアダプターFR-FX20を手に入れたので、キャノンのレンズも使えます。そのためレンズのマウントとして、ニコンFマウント、富士XFマウント、キャノンEFマウントから選択することが出来ます。
- NIKON1 J5
- NIKON Z50
- FUJIFILM X-T30
70-300mmズームレンズ
カメラのレンズには、純正とサードパーティ製があり様々なものがありますが、今回は純正のレンズから候補を選びました。比較するのは以下のレンズ。
- AF-P DX NIKKOR 70-300mm f/4.5-6.3G ED VR
- XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR
- EF70-300mm F4-5.6 IS II USM
これらのズームレンズは、単焦点に比べると解像度は落ちますが、低価格で軽いこととズームができるので利便性の高さが最大のメリットです。
- 軽い
- 価格が安い
- コンパクト
- ズームでき利便性が高い
- レンズの明るさが暗い
- 解像度が劣る
仕様比較
AF-P DX NIKKOR 70-300mm f/4.5-6.3G ED VR | XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR | EF70-300mm F4-5.6 IS II USM | |
レンズ構成 | 10群14枚 (EDレンズ1枚) | 12群17枚 (非球面レンズ1枚、EDレンズ2枚) | 12群17枚 (UDレンズ1枚) |
焦点距離 | f=70-300mm | f=70-300mm | f=70-300mm |
最大口径比 | F4.5-6.3 | F4-F5.6 | F4-F5.6 |
最小絞り | F22~32 | F22 | F32~45 |
羽根枚数 | 7枚 | 9枚 | 9枚 |
最短撮影距離 | 1.1m(ズーム全域) | 0.83m | 1.2m |
最大撮影倍率 | 0.22倍 | 0.33倍(T端)35mm換算0.5倍 | 0.25倍(300mm時) |
外形寸法 | 約72m×125mm | Ø75mm x 132.5mm(W端) Ø75mm x 205.5mm(T端) | φ80mm×145.5mm |
質量(約) | 約415g | 580g | 約710g |
フィルターサイズ | 58mm | 67mm | 67mm |
手ブレ補正効果 | 4.0段分 | 5.5段分 | 4.0段分 |
テレコンバーター | × | ○ | × |
希望小売価格 | 52,250円(税込) | 121,000円(税込) | 79,200円(税込) |
それぞれの仕様を比較して見えてくることは、「XF70-300」は、手振れ補正の補正効果も高く、光学系には非球面レンズ1枚、EDレンズ2枚を採用していますが、ニコン「AF-P DX NIKKOR 70-300mm」とキャノン「EF70-300mm」は、特殊分散ガラスは1枚になっていますので、色収差の抑制に差が出ると思われます。
その他の部分としては、ニコンの「AF-P DX NIKKOR 70-300mm」は、フィルターサイズが57㎜と他と比べ小さいことから望遠端のF値が暗くなっていますが、軽くコンパクトに仕上がっています。キヤノンの「EF70-300mm F4-5.6 IS II」は、唯一フルサイズにも対応していることもあり本体が大きく重い事が挙げられます。
MTF曲線比較
野鳥撮影でよく使う望遠側(300mm)のMTF曲線を比較してみると以下の図のようになります。
ただし、空間周波数が「AF-P DX NIKKOR 70-300mmf/4.5-6.3G ED VR」と「EF70-300mm F4-5.6 IS II USM」は10本/mm、「XF70-300mmF4-5.6 RLM OIS WR」は15本/mmとなっています。これについては、レンズを評価するための数値なので気にせずに比較すればよいようです。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
MTF(Modulation Transfer Function)は、レンズ性能を評価する指標のひとつで、レンズの結像性能を知るために、被写体の持つコントラストをどの程度忠実に再現できるかを空間周波数特性として表現したものです。
掲載のMTF曲線は、空間周波数を特定の値(10本/mmと30本/mm)に固定した状態で、横軸に像高(画面中心からの距離mm)をとり、縦軸にコントラストの値(最大値1)を示したものです。各レンズに対応するMTF曲線は、絞り開放の場合に対応し、空間周波数10本/mmに対応する曲線を赤線で、空間周波数30本/mmに対応する曲線を青線で示しています。
軸外像高では非点収差の影響でS方向(サジタル方向:放射方向)とM方向(メリジオナル方向:同心円方向)で、コントラストの変化が異なってきます。一般に、10本/mm の曲線が1に近いほどコントラストがよくヌケの良いレンズになり、30本/mmの数値が高いほど高解像なレンズといえます。
株式会社 ニコン イメージングジャパン
MTF曲線は、空間周波数の30本/mm及び45本/mmが「1」に近づくほど解像度が高く、10本/mm及び15本/mmの方が「1」に近づく程コントラストが高く抜けが良いとされますので中心部の解像度は、XF70-300mm→EF70-300mm→AF-P DX NIKKOR 70-300mmの順となっていますが、「XF70-300mmF4-5.6 RLM OIS WR」は周辺にかけての数値が下がっているのが気になる所です。
コントラスト/抜けの良さについては「XF70-300mmF4-5.6 RLM OIS WR」に次いで「AF-P DX NIKKOR 70-300mmf/4.5-6.3G ED VR」が良く「EF70-300mm F4-5.6 IS II」が少し劣るということが読み取れます。
XF70-300mmF4-5.6 RLM OIS WR
コントラスト共に抜けが良く、レンズ中心部の解像度が高いが、やや「柔らかめ」の描写
AF-P DX NIKKOR 70-300mmf/4.5-6.3G ED VR
コントラストが高く中心部から周辺にかけて解像度も高い「かっちり」とした描写
EF70-300mm F4-5.6 IS II
中心部から周辺にかけての解像度は高いが、少し「あっさり」とした描写
MTF曲線は、あくまでデータですので実写とは異なりますがデータ上では、このような事が言えると思います。
レンズとカメラの組み合わせ
ニコンと富士のカメラを使用している私の場合、組み合わせとしては、次の組み合わせが考えられます。
NIKON1 J5 /Z50 : AF-P DX NIKKOR 70-300mm f/4.5-6.3G ED VR
X-T30 : XF70-300mmF4-5.6 RLM OIS WR or アダプター使用でEF70-300mm F4-5.6 IS II USM
解像度を中心に考えると、MTF曲線で見る限り以下の順になりますがそれほど大きな差はなさそうです。
- XF70-300mmF4-5.6 RLM OIS WR(X-T30にしか使えない)
- EF70-300mm F4-5.6 IS II USM(X-T30にしか使えない)
- AF-P DX NIKKOR 70-300mm f/4.5-6.3G ED VR(NIKON1とZ50に使用可能)
この中で一番安く入手可能なのが「AF-P DX NIKKOR 70-300mm f/4.5-6.3G ED」で 、このレンズはD5300のWズームキットとして発売されていたもので、キットバラシが流通しているため新品でも格安で入手できるのが魅力です。そのためレンズと電子接点付きマウントアダプターを合わせてもXF70-300mmF4-5.6 RLM OIS WRよりも安く済むことになります。その上、ニコン/富士共に使える様になりますので大変魅力的です。
しかし作例を見ているとAF-P DX NIKKOR 70-300mm f/4.5-6.3G ED VRは色収差が出やすいようなので描写は、XF70-300mmF4-5.6 RLM OIS WRが上なのは間違い所が悩ましい所です。
Fringer FR-FTX1(ニコンFマウントレンズ → 富士フイルムXマウント変換)
2021年1月28日にニコンFマウントレンズ → 富士フイルムXマウントへと変換 してくれる電子接点付きマウントアダプターの「FR-FTX1」が発売されています。
特徴
- レンズにモーターを内蔵したニコンFマウントのCPUレンズでAE/AF撮影が可能
- CPUレンズ(モーター非内蔵)の絞りコントロールが可能
- コンティニュアスAF(AF-C)
- 「顔検出」「瞳AF」に対応
- レンズ内の手ブレ補正機構
- ボディ内の手ブレ補正機構
- 撮影画像の焦点距離、露出などのExifデータを記録
- 搭載されているUSB端子によりアダプターのファームウェアアップデートが可能
- アダプター内部は植毛加工されており、内面反射を抑制
ただし、動作確認済みのレンズは位相差AFに対応していますが、そうでない場合はコントラストAFとなってしまいますが、レンズ資産を生かせるのは魅力的です。
最後に
今回は、ニコンと富士マウントとレンズアダプターによるEFマウントが使えることから、ニコン・キャノンの入門レンズでありながら評判の良いレンズと富士フィルムから発売されて間もない70-300mmレンズの仕様から見えてくる特徴と、MTF曲線から見る描写の性格を検証し野鳥撮影のみならず普段使いとしても使用しやすいものを解説しました。そしてメーカー縛りを失くしてくれるマウントアダプターを紹介しましたが、マウントアダプターは選択の幅を広げてくれる反面、機材好きには悩む範囲も広がります。そのため今まで以上にレンズ選びに悩んでいる方も多いはず。この記事がそんな方の少しでも参考になれば幸いです。
コメント