電子接点付きのマウントアダプターを使うことにより、メーカー違いのカメラとレンズの組み合わせが可能となったことからレンズ選びの幅も広がり、その分レンズ沼も深くなった分レンズ選びに悩んでいる方も多いのではないでしょうか?
通常はマウントアダプター「FR-FX20」と「FR-FTX1」を使い「EF400mmF5.6L USM」とニコン「AF-S300mmF4 PF ED VR」と富士フィルム「X-T30」の組み合わせを野鳥撮影に使用していますが、撮影対象が昆虫になると 特に「EF400mmF5.6L USM」 の最短撮影距離が気になったので仕様を調べ撮影倍率を比較してみました。
昆虫撮影では、最短撮影距離も大事
野鳥撮影では、まったく気にならなかった最短撮影距離でしたが、自宅にやってきたハグロトンボを写した際、「 AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR 」 の最短撮影距離である1.4m付近で撮影した後、もっと大きく写したいと思い、レンズをより焦点距離の長い「EF400mmF5.6USM」 に付け替え撮影してみたところ、ピントを合わす事が出来ない。距離を取ろうと下がるにも限界があり、結局一枚もシャッターを切る事が出来ませんでした。
そういえば、「 EF400mmF5.6L USM 」の最短撮影距離を気にしたことがなかったと思い仕様を調べてみることにしました。
EF400mmF5.6L USM 仕様
焦点距離 mm | 400mm |
最大口径比 | 1:5.6 |
画角 (水平・垂直・対角線) | 5°10’・3°30’・6°10′ |
レンズ構成 | 6群 7枚 |
最短撮影距離 | 3.5m |
最大撮影倍率 | 0.12倍 |
フィルター径 | 77mm |
最大径×長さ | φ90mm×256.5mm |
質量 | 約1,250g |
数値を見て驚きました。3.5mも離れないとピントが合わない。野鳥撮影では見上げることはあっても見下ろして撮影する事はありませんし、まして3.5m以内で撮影する事は、稀にしかないので気にならなかったのでしょうね。3.5m離れるには後方に下がるしかありませんが、後方のスペースの問題やアングルによっては被写体が隠れてしまい撮影できない可能性も出てきます。
もう一方の「 AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR 」の方も見てみましょう。
AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR 仕様
焦点距離 | 300mm |
最大口径比 | 1:4 |
レンズ構成 | 10群16枚(EDレンズ1枚、PF(位相フレネル)レンズ1枚、ナノクリスタルコートあり、 フッ素コートあり) |
画角 | 8°10′(FXフォーマットのデジタル一眼レフカメラ) 5°20′(DXフォーマットのデジタル一眼レフカメラ) |
手ブレ補正 | ボイスコイルモーター(VCM)によるレンズシフト方式 手ブレ補正効果:4.5段※CIPA規格準拠 VRモード:NORMAL/SPORT 三脚使用時ブレ補正:有り |
撮影距離 | 1.4m |
最大撮影倍率 | 0.24倍 |
フィルター径 | 77mm |
寸法 | 約89mm(最大径)×147.5mm(レンズマウント基準面からレンズ先端まで) |
質量 | 約755g |
こちらは、1.4mとかなり接近することが出来ますので足元の昆虫でもピントが合います。それ以上は望遠マクロの分野になりますので、これぐらいで充分でしょう。
最大撮影倍率
昔に比べると望遠レンズの最短撮影距離は短く設計されるようになってきているので「 AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR 」は「0.24倍」、設計が古い「EF400mmF5.6USM」は「0.12倍」となっているのかもしれません。そのため焦点距離が100mm長いにもかかわらず 「EF400mmF5.6USM」 は小さくしか写せません。
「EF400mmF5.6L]の最短撮影距離3.5m、最大撮影倍率が0.12倍であっても、スズメよりも少し多きサイズのアオジなら、画面いっぱいに写すことが可能なので野鳥用と考えるのなら、なんら問題ありません。(構図が悪いのはご勘弁ください。)
FUJIFILM X-T30ボディで両レンズの撮影倍率を比較
そこで、「ニコン→富士」及び「キャノン→富士」へマウントを変換する電子接点付きのマウントアダプターを用いて、ボディを富士フィルム「X-T30」、レンズをニコン「AF-S300mmF4 PF ED VR」と「EF400mmF5.6L USM」で撮影倍率の違いを比較してみました。
実際の画像で比較してみると最大撮影倍率の記載通り、 AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR の方が圧倒的に大きく写すことが可能です。デジタルカメラはトリミングが可能とはいえ大きく写せるに越したことはありません。
旧サンヨン
設計が古い「EF400mmF5.6USM」 と同世代である旧型のサンヨンの最短撮影距離も調べてみた所キャノン「EF300mmF4L USM」が2.5m。ニコンの旧サンヨン「 AI AF-S Nikkor 300mm f/4D IF-ED 」が1.45mとなっており、旧サンヨン時代から顕著な差があった事がわかります。キャノンの方が最短撮影距離が長いので、昆虫撮影にも使うつもりならニコンの旧サンヨンの方が使いやすそうです。
EF300mmF4L USM | AI AF-S Nikkor 300mm f/4D IF-ED | EF300mm F4L IS USM | |
焦点距離 | 300mm | 300mm | 300mm |
最大口径比 | 1:4 | 1:4 | 1:4 |
レンズ構成(群) | 7群8枚 | 6群10枚(EDガラス2枚) | 11群 15枚 |
最小絞り | 32 | 32 | 32 |
最短撮影距離(m) | 2.5m | 1.45m | 1.5m |
最大撮影倍率(倍) | 0.13倍 | 0.27倍 | 0.24倍 |
フィルター径(mm) | 77mm | 77mm | 77 mm |
最大径x長さ(mm)x(mm) | 90 x 213.5 | 90 x 222.5 x 230.5 | 90mm×221mm |
質 量(g) | 1,165g | 1300g(三脚座なし) | 約1,190g |
ついでにキャノンの現行モデルである「 EF300mm F4L IS USM 」の仕様を見てみると、ニコンには及びませんが最短撮影距離が大幅に短縮され1.5mになっています。
手振れ補正
今回の記事のテーマとは直接関係ありませんが、木陰などではシャッタースピードが上がらないのでブレやすくなりますし、ISO感度を上げるのは画質に影響しますので極力抑えたいところです。特にトンボの様な被写体ブレを起こしにくいものが対象の場合には効果的ですのであればシャッターチャンスに強い事は言うまでもありません。
最後に
電子接点付きのマウントアダプターが登場したことにより、他社メーカーのレンズ選びに悩まれている方もおられるのではないかと思い記事にしてみましたが、対象が野鳥のみなら手振れ補正の有無と価格で選べばよいと思いますが、昆虫もとお考えの方で手振れ補正付が良いなら「 AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR 」、不要なら「 AI AF-S Nikkor 300mm f/4D IF-ED 」が使いやすいと思います。
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