野鳥撮影において、NIKON1用のレンズとして、AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR を使っていますが、もう少し軽かったらいいなと思い、軽くて良く写ると評判の「AF-P DX NIKKOR 70-300mm f/4.5-6.3G ED VR」について調べていたところ、1 NIKKOR VR 70-300mmのMTF曲線について気になるところがあったので合わせて調べてみることにしました。
AF-P DX NIKKOR 70-300mm f/4.5-6.3G ED VR
最初に、現在使用している「AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR」と「AF-P DX NIKKOR 70-300mm f/4.5-6.3G ED VR」の諸元を比較してみます。
AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR | AF-P DX NIKKOR 70-300mm f/4.5-6.3G ED VR | |
発売時期 | 2015年1月29日 | 2016年9月16日 |
型式 | ニコンFマウントCPU内蔵Eタイプ、AF-Sレンズ | ニコンFマウントCPU内蔵Gタイプ、AF-P DXレンズ |
焦点距離 | 300mm | 70mm-300mm |
最大口径比 | 1:4 | 1:4.5-6.3 |
レンズ構成 | 10群16枚(EDレンズ1枚、PF(位相フレネル)レンズ1枚、ナノクリスタルコートあり、フッ素コートあり) | 10群14枚(EDレンズ1枚) |
画角 | 8°10′(FXフォーマットのデジタル一眼レフカメラ) 5°20′(DXフォーマットのデジタル一眼レフカメラ) | 22°50′-5°20′(DXフォーマットのデジタル一眼レフカメラ) FXフォーマット/35mm判換算:105mm-450mmレンズの画角に相当 |
ピント合わせ | IF(ニコン内焦)方式、超音波モーターによるオートフォーカス、マニュアルフォーカス可能 | IF(ニコン内焦)方式、ステッピングモーターによるオートフォーカス、マニュアルフォーカス可能 |
手ブレ補正 | ボイスコイルモーター(VCM)によるレンズシフト方式 手ブレ補正効果:4.5段※CIPA規格準拠 VRモード:NORMAL/SPORT 三脚使用時ブレ補正:有り | ボイスコイルモーター(VCM)によるレンズシフト方式 手ブレ補正効果:4.0段※CIPA規格準拠 VRモード:NORMAL 三脚使用時ブレ補正:有り |
最短撮影距離 | 1.4m | 1.1m(ズーム全域) |
最大撮影倍率 | 0.24倍 | 0.22倍 |
絞り羽根枚数 | 9枚(円形絞り) | 7枚(円形絞り) |
絞り方式 | 電磁絞りによる自動絞り | 自動絞り |
最大絞り | f/4 | ・焦点距離70mm時:f/4.5 ・焦点距離300mm時:f/6.3 |
最小絞り | f/32 | ・焦点距離70mm時:f/22 ・焦点距離300mm時:f/32 |
測光方式 | 開放測光 | 開放測光 |
フォーカス制限切り換えスイッチ | FULL(∞~1.4m)と∞~3mの2段切り換え | なし |
アタッチメントサイズ(フィルターサイズ) | 77mm(P=0.75mm) | 58mm(P=0.75mm) |
マウントアダプターFT1適否 | AF駆動可 | AF駆動可 |
寸法 | 約89mm(最大径)×147.5mm(レンズマウント基準面からレンズ先端まで) | 約72mm(最大径)×125mm(レンズマウント基準面からレンズ先端まで) |
質量 | 約755g | 約415g |
三脚座 | 取付可(別売り) | 取付不可 |
希望小売価格 | 272,250円 | 52,250円 |
野鳥撮影に特化して考えるので、「AF-P DX NIKKOR 70-300mm f/4.5-6.3G ED VR」は、望遠端の300mmののMTFで比較してみます。
ニコンは、MTFについて以下のように記載しています。
MTF(Modulation Transfer Function)は、レンズ性能を評価する指標のひとつで、レンズの結像性能を知るために、被写体の持つコントラストをどの程度忠実に再現できるかを空間周波数特性として表現したものです。
掲載のMTF曲線は、空間周波数を特定の値(10本/mmと30本/mm)に固定した状態で、横軸に像高(画面中心からの距離mm)をとり、縦軸にコントラストの値(最大値1)を示したものです。各レンズに対応するMTF曲線は、絞り開放の場合に対応し、空間周波数10本/mmに対応する曲線を赤線で、空間周波数30本/mmに対応する曲線を青線で示しています。
軸外像高では非点収差の影響でS方向(サジタル方向:放射方向)とM方向(メリジオナル方向:同心円方向)で、コントラストの変化が異なってきます。一般に、10本/mm の曲線が1に近いほどコントラストがよくヌケの良いレンズになり、30本/mmの数値が高いほど高解像なレンズといえます。
株式会社 ニコン イメージングジャパン
これに照らし合わせながら、MTF曲線を見ていくと中心部である表の 0 の部分で比較すると、左の表は、10本/mm、30本/mm、S方向、M方向の全てがほぼ 1 となっていますが、右側では、10本/mmがS方向、M方向が約0.98、30本/mmがS方向、M方向共に約0.81になっています。
このことから言えるのは、「AF-P DX NIKKOR 70-300mm f/4.5-6.3G ED VR」は、「AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR」に対して、コントラストは近いものをもっているが、解像力は劣るという事になります。しかし希望小売価格で、5倍程の価格差があり、単焦点とズームレンズという事を考えると、かなり健闘して言えると思います。
ステッピングモーターを使いAFが早く解像感も良い「AF-P DX NIKKOR 70-300mm f/4.5-6.3G ED VR」ですが、ネット上の作例を見ているとEDレンズを使用しているものの状況によっては色収差が出やすいように感じます。気になる場合は画像ソフトで補正する必要がありそうですね。
1 NIKKOR VR 70-300mm f/4.5-5.6
MTFについて調べている時に、NIKKOR 1マウントレンズについて、以下のような記載を見つけました。
NIKKOR 1マウントレンズの空間周波数は「20本/mm」と「60本/mm」とを公表しております。
株式会社 ニコン イメージングジャパン
NIKKOR 1マウントレンズでは「20本/mm」によって上述の「10本/mm」と同じことを評価することができ、同様に「60本/mm」によって上述の「30本/mm」と同じことを評価することができます。
このことから推察するに、NIKON1は、1インチセンサーで使用しているのでフルサイズやAPS-C用のレンズよりも高い性能が求められるということなのでしょうか?
「1 NIKKOR VR 70-300mm f/4.5-5.6 」と「AF-P DX NIKKOR 70-300mm f/4.5-6.3G ED VR」の諸元とMTFを見てみたいと思います。
1 NIKKOR VR 70-300mm f/4.5-5.6 | AF-P DX NIKKOR 70-300mm f/4.5-6.3G ED VR | |
発売時期 | 2014年6月26日 | 2016年9月16日 |
型式 | 1マウントレンズ | ニコンFマウントCPU内蔵Gタイプ、AF-P DXレンズ |
焦点距離 | 70mm-300mm | 70mm-300mm |
最大口径比 | 1:4.5-5.6 | 1:4.5-6.3 |
レンズ構成 | 10群16枚(スーパーEDレンズ1枚、ナノクリスタルコートあり) | 10群14枚(EDレンズ1枚) |
画角 | 13°-3° 189mm-810mmレンズの画角に相当(35mm判換算) | 22°50′-5°20′(DXフォーマットのデジタル一眼レフカメラ) FXフォーマット/35mm判換算:105mm-450mmレンズの画角に相当 |
手ブレ補正 | ボイスコイルモーター(VCM)によるレンズシフト方式 手ブレ補正効果:4.0段※(CIPA規格準拠) VRモード:NORMAL/ACTIVE/OFF(カメラ側で設定、カメラによって一部制限あり) | ボイスコイルモーター(VCM)によるレンズシフト方式 手ブレ補正効果:4.0段※CIPA規格準拠 VRモード:NORMAL 三脚使用時ブレ補正:有り |
最短撮影距離 | 1.0m(焦点距離70mm時)、1.6m(焦点距離150mm時)、1.6m(焦点距離300mm時) | 1.1m(ズーム全域) |
最大撮影倍率 | 約0.15倍(35mm判換算 約0.41倍) | 0.22倍 |
絞り羽根枚数 | 7枚(円形絞り) | 7枚(円形絞り) |
絞り方式 | 自動絞り | 自動絞り |
最大絞り | 焦点距離70mm時:f/4.5 焦点距離300mm時:f/5.6 | ・焦点距離70mm時:f/4.5 ・焦点距離300mm時:f/6.3 |
最小絞り | 焦点距離70mm時:f/16 焦点距離300mm時:f/16 | ・焦点距離70mm時:f/22 ・焦点距離300mm時:f/32 |
フォーカス制限切り換えスイッチ | FULLとLIMIT(∞~約7m)の2段切り換え | なし |
アタッチメントサイズ(フィルターサイズ) | 62mm(P=0.75mm) | 58mm(P=0.75mm) |
マウントアダプターFT1適否 | 不可 | AF駆動可 |
寸法 | 約73mm(最大径)×108mm(レンズマウント基準面からレンズ先端まで、沈胴時) | 約72mm(最大径)×125mm(レンズマウント基準面からレンズ先端まで) |
質量 | 約550g | 約415g |
三脚座 | 有り(縦位置不可) | 取付不可 |
希望小売価格 | 148,500円 | 52,250円 |
諸元を見る限りでは、描写に関係するもので、「1 NIKKOR VR 70-300mm f/4.5-5.6 」が優れているのは以下の物が挙げられます。
- レンズ口径が大きい
- スーパーEDレンズ
- ナノクリスタルコート
しかし、MTF曲線は縦軸が「1 」に近ずくほどコントラスト、解像度が高いとされていますが、明らかに「1 NIKKOR VR 70-300mm f/4.5-5.6 」のほうが低いです。ただし空間周波数を特定の値が(20本/mmと60本/mm)となっていますので、この数値をどのように解釈すればよいのかが分かりません。
そこで、ニコンに問い合わせたところ、次のような返事をいただきました。
NIKKOR 1マウントレンズの設計上、空間周波数20本/mm、60本/mmが必要であるということだけで、この数値が多いからと言って、1マウントレンズの方がコントラストや解像度が高いということではなく、MTF曲線で比較する場合では空間周波数の本数にかかわらず縦軸の「1」に近いほうがコントラストや解像度が高いレンズとなるそうです。
このことを踏まえMTF曲線から見た場合、レンズ性能の順位は次のようになります。
1. AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR
Nikon 単焦点レンズ AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR フルサイズ対応 AFSVRPF300 4
2.AF-P DX NIKKOR 70-300mm f/4.5-6.3G ED VR
Nikon 望遠ズームレンズ AF-P DX NIKKOR 70-300mm f/4.5-6.3G ED VR ニコンDXフォーマット専用
3. 1 NIKKOR VR 70-300mm f/4.5-5.6
Nikon 望遠ズームレンズ1 NIKKOR VR 70-300mm f/4.5-5.6 1NVR70-300
まとめ
今回の比較はMTF曲線での比較であり、実際の描写にはそのほかの要素も関わります。1位は「AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR」で変わりはないでしょうが、「1 NIKKOR VR 70-300mm f/4.5-5.6」は、EDレンズよりも更に収差を補正するスーパーEDレンズを採用し、ナノクリスタルコートも施されている事から、収差は良好に補正されていると思われます。収差は、コントラストや解像度にも影響を及ぼしますので、実際の描写では、「AF-P DX NIKKOR 70-300mm f/4.5-6.3G ED VR」よりも良い結果を出す可能性もあります。
レンズを選ぶ基準
- 描写性重視 → AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR
- コスパ重視 → AF-P DX NIKKOR 70-300mm f/4.5-6.3G ED VR
- コンパクト重視 → 1 NIKKOR VR 70-300mm f/4.5-5.6
- 操作性重視 → 1 NIKKOR VR 70-300mm f/4.5-5.6
- 軽さ重視 → 1 NIKKOR VR 70-300mm f/4.5-5.6(微々たるものですが)
レンズ単体では、「1 NIKKOR VR 70-300mm f/4.5-5.6」 約550g 、AF-P DX NIKKOR 70-300mm f/4.5-6.3G ED VR」約415gですが、「マウントアダプターFT1」が約150gですので合わせると、565gとなり若干ですが重くなります。
これからレンズを選ぼうとお考えの方は、このような基準で選ぶと良いのではないかと思います。
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